本当に大丈夫?家族信託のデメリットと回避

家族信託のデメリットの回避

家族信託を利用することによるデメリットについてご案内致しましたが、如何でしょうか。デメリットが多すぎて、利用しない方が良いのではないかと思われたかもしれません。
ただ、デメリットという概念は、比較対象があってのものです。ご案内したデメリットは、何もしない場合と、家族信託を利用した場合の比較です。何もしない場合と比較すれば、こうして多くのデメリットが生じるわけですが、一方で、死活問題となり得る資産凍結問題は回避することができます。
また、比較対象を、後見制度として考えると、後見制度では、そもそも建替え等のための借入や、資産運用はできず、家族が後見人となった場合の事務負担は、身上監護業務がある分、家族信託よりも大きいです。損益通算は、収益財産を全て信託するのであれば問題は生じ得ないことから、後見制度と比したときのデメリットとは言えないでしょう。そうすると、後見制度と比較した場合には、空き家特例のみがデメリットとして挙げられることとなります。
さて、デメリットの意味について補足をさせて頂いたうえで、これを回避することは出来るのかについて、ご案内致します。

信託内借入によるデメリットの回避

信託内借入は、対応金融機関が限定されることから、融資相談先が狭まり、結果として、融資条件を妥協せざるを得ない可能性があります。
このデメリットの回避方法としては、信託契約組成の段階で、金融機関と相談しながら進めていくことが挙げられます。信託への対応は金融機関毎に異なっており、極端な例では、既に信託契約が組まれている事案においては、契約書を修正しても融資条件を満たさず、融資を可能とするには、信託契約組成の段階から打ち合わせを要するとしています。そのため、信託契約組成の段階から、金融機関に相談しながら進めていくこと重要で、これにより、融資対応金融機関の狭まりを抑えることができ、融資条件におけるデメリットをほぼ解消することができます。
但し、金融機関が融資の事前相談を受け付けるのは、ハウスメーカーと契約済である等、融資が具体化されていることを求める金融機関が多い点には注意が必要です。
融資が具体化していない場合には、対応金融機関はかなり限定されてしまいますが、融資可能かつ、金利も特に高いといったわけではない金融機関はございます。この場合でも、事前に金融機関との打ち合わせはしておくべきで、何らの事前相談無しに信託契約を済ませてしまい、融資が必要になったときに初めて相談という流れですと、選択肢は極めて限定的ないし融資元が見つからない事態になりかねません。
なお、司法書士等を介さなければ、対応を受け付けない金融機関もございますので、重要なことは、信託組成の相談ないし依頼を、法的視点だけでなく、社会実態がどうなっているかという視点を合わせ持ち、信託契約後も支援を継続してくれる専門家にすることと言えます。

資産運用の制限デメリット回避

家族信託は、証券会社等における対応が限定的で、金融資産運用を行っていくに当たり、委託先となる証券会社等の選択、商品の選択の2段階で制限が生じるデメリットがあります。
小見出し1 証券会社等の選択制限
信託財産の運用を委託できる証券会社等自体が限定的であり、家族信託に対応していない証券会社等で資産運用をされている場合で、その証券等を金銭換価せずに信託財産とする場合には、証券会社等を切り替える移管作業を行う必要があります。また、証券会社等によって、取扱商品及び手数料は異なるため、運用に影響が生じます。
小見出し2 商品選択の制限
家族信託に対応している証券会社等であっても、株取引は認めない等、運用商品に制限を設けている証券会社等がございます。せっかく、家族信託により受託者が運用を継続していく形を作れても、商品が制限されてしまい、運用に影響が生じる結果となります。
小見出し3 デメリットの回避
では、こうしたデメリットをどのように回避するかですが、あくまで、証券会社等での資産運用を継続していきたいということであれば、家族信託組成の段階において、家族信託への対応と既存取引商品(保有証券等)の取り扱いが可能かについて、既存取引先証券会社等に確認し、対応困難なようであれば、対応可能な移管先を探し、その証券会社等へ保有証券を移管することで問題を回避します。

受託者の事務負担デメリットの回避

先の解説の通り、受託者は、他人の財産を管理すると同様のレベルで、信託財産の管理を行う必要があり、この義務を遂行する具体的な事務作業の受託者負担が、家族信託のデメリットの一つとして挙げられます。
これを回避するには、受託者の事務負担を軽減する必要があります。
これは、具体的には、「何をすれば良いか分からない状態からの解放」、「会計資料作成事務の低減」、「会計事務の外注」の3点が挙げられます。
小見出し1 「何をすればよいか分からない状態からの解放」
タスクを明確化することで、何をすればよいか分からない状態から解放します。
一般的に、家族信託サービスは事後支援がありません。サービス提供者である専門家自身が、受託者業務というものを理解していないことと、料金体系が高額になりがちであることがその理由として考えられます。家族信託組成後の事後支援を、納得のいく料金で対応してくれる専門家に家族信託を相談ないし依頼することで、問題を解消出来るでしょう。

小見出し2 「会計資料作成事務の低減」
受託者は、会計資料を作り、必要に応じて、税務署に適格の届出書類を作成の上、提出する必要があります。ここで問題となるのが、会計資料とは、どのようなものを、どのようにして作れば良いか、税務署に提出する適格書類とはどのようなものか、また、どのようにして作れば良いか、そして、その業務負荷です。
この点については、信託組成後の事後支援として、受託者会計業務のフォーマットを用意しているような専門家に家族信託組成の相談ないし依頼をされることで問題を解消できるでしょう。
小見出し3 「会計事務の外注」
利用者様によっては、多忙で、受託者会計業務を行うことが難しい方や、事務作業が苦手な方もいらっしゃるでしょう。このような場合には、日常記帳から会計資料作成に至るまで、外注してしまう方法がございます。税理士が最も適した外注先となりますが、信託会計に精通した税理士は稀ですので注意が必要です。信託税務に精通し、会計業務を引き受けて頂ける税理士と提携されている司法書士等の専門家に家族信託組成の相談ないし依頼をされることで問題を解消できるでしょう。

空き家特例不適用のデメリット回避

空き家特例が適用されないというルールそのものを回避することは出来ません。相続発生前後の売却を前提とするならば、対応と致しましては、相続発生前に売却する又は自宅は信託財産としないの二択となります。前者であれば、居住用財産を譲渡したときの3,000万控除が使用可能で、後者であれば、通常通り空家特例を利用可能です。
この問題につきましては、家族信託を利用した後に考えるようなことではなく、家族信託の利用前に検討する必要があります。家族信託を利用する必要性があるのかという根本的な問題で、これを判断するには、法務、税務、財産活用、生活保障といった多角的観点からの全体スキーム構築作業が必要です。
詰まるところ、デメリットの回避方法としては、家族信託の組成だけでなく、最後の出口に至るまでスキームを構築してくれる専門家に、家族信託の相談ないし依頼をすることでしょう。

損益通算の禁止のデメリット回避

損益通算の禁止は法律で定められている事項なので、それ自体を回避することはできません。
ただ、損益通算の問題は、収益事業が全て信託財産とされるのであれば生じません。例えば、賃貸アパートAとBの二つの収益物件を有していたとして、Aのみを信託すると、損益通算の問題が生じますが、ABともに信託財産とするのであれば、この問題は生じないこととなります。
とは言え、賃貸アパートAは長男に、賃貸アパートBは長女に将来的に承継させるような場合には、それぞれ別個の信託契約を組成した方がシンプルとなるケースもあるので、損益通算の問題は、財産承継と財産の維持・活用の問題も含めて、総合的にどうするべきかを信託組成の段階で検討する必要がございます。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

世田谷区 家族信託・相続の窓口の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、税務、財産活
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

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私たちは、司法書士と税理士を中心とする、相続や家族信託のプロフェッショナルです。「何をすればいいか分からない」といった段階からご相談頂けますので、お気軽にご相談下さい。

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