本当に大丈夫?家族信託のデメリットと回避

家族信託のデメリットとは

借入先が限定され、融資条件が悪くなる可能性

家族信託を利用する一つの目的として、将来の建替えや大規模修繕が挙げられますが、多くの場合、特に、建替えにおいては、ほとんどのケースにおいて、実行には借入を伴います。
この借入が、家族信託を利用することによるデメリットとなります。
受託者(家族信託により、財産管理等を託される人のことです。)が信託財産を担保として起こす借入を信託内借入と呼ぶのですが、この信託内借入は、対応してくれる金融機関が少ないのです。信託内借入に対応してくれる金融機関であっても、実際の手続きには、借入を起こす段階で、委託者(家族信託により、財産管理等を託す本人のことです。)の判断能力に問題がないことを求めるような、家族信託を否定する金融機関もあります。
つまりは、融資可能な金融機関が限られることにより、選択肢が限られ、結果として、金利や返済年数等の融資条件に妥協せざるを得ない可能性があるのです。

資産運用が事実上限定されてしまう

家族信託を利用することで、証券会社等(証券会社、信託銀行、銀行、信用金庫を指します。)での取引を、受託者が行えるようにすることが可能です。これにより、本人の判断能力が減退ないし喪失したとしても、資産運用を継続的に行っていくことできます。
しかしながら、実態としては、受託者による資産運用に対応していない証券会社等が数多くあり、また、対応している証券会社等であっても、受益者連続型信託(家族信託により信託した財産を信託財産と言い、信託財産から生じる利益(賃料や居住出来ることを指します)を受ける人を受益者と言います。この受益者の地位を、当初はAさん、Aさんが死亡したらBさん、続いてBさんも死亡したら、Cさんといった形で、連続的に指定する家族信託の形を指します)は認めない、株取引は認めない等、制限を設けています。
つまり、家族信託を利用することで、取引先の証券会社等を変更する必要が生じたり、運用商品が限定されてしまうのです。

受託者の事務負担

親の財産を子が管理する場合において、会計帳簿を作成したり、口座を明確に分離して管理したりと、他人の財産を預かるに足りるような管理をされる方は少ないでしょう。一方で、仮に、友人から、1,000万円の金銭を特定の目的に従って使うよう任せられたら、「いつ」、「何に」、「何のために」、「どれだけ」使用したか、記録とエビデンスを残し、預かった金銭も、自身のお金と混ざってしまうことのないように管理されるのではないでしょうか。
家族信託における受託者は、親の財産の管理をする場合であっても、他人の財産を管理するのと同様のレベルで管理しなければなりません。つまり、先の例で言うところの、友人の財産を管理するのと同様に、記録やエビデンスを残し、自身の財産とは分別して管理する必要があるということです。
具体的に例を挙げると、受託者は、管理専用の口座を新たに開設、その口座において、信託された金銭を管理し、不動産の登記名義や損害保険の名義、賃料の振込先を受託者に変え、信託法及び信託契約に従って財産を管理・処分等し、これらの会計帳簿を付け、会計資料を作成、領収書等は保管し、収益事業(信託財産に賃貸不動産がある場合や、証券取引を行う場合)がある場合には、税務署へ毎年届出を行う必要があります。

空き家特例を利用できない

空き家特例と言われる、譲渡所得税の軽減措置があるのですが、これが、家族信託を利用されていた不動産については適用されません。
空き家特例は、相続発生後に、故人の有していた自宅を売却した場合の譲渡所得を最大3,000万円まで控除することができる特例なのですが、これが、自宅を信託財産とする家族信託を利用していて、信託契約に基づき不動産を取得された場合には、適用されないのです。

損益通算ができない

税法上の取り扱いで、信託から生じた不動産所得の損失については、生じなかったものとみなされ、信託財産以外の所得から差し引くことができません。
例えば、賃貸不動産を2棟所有している方が、1棟のみを信託財産とした場合で、その1棟について大規模修繕などを行って年間の収支が赤字となった場合に、信託財産としなかったもう1棟の所得と相殺して利益を圧縮できなくなるのです。
さらに、「損失については生じなかったもの」となりますので、純損失の繰越し控除を行うこともきません。なお、同じ信託契約で信託財産とされている不動産の損失については損益通算が可能です。

司法書士 飯田 真司

<strong>飯田 真司</strong>

世田谷区 家族信託・相続の窓口の司法書士飯田真司と申します。大学在学中はお笑い芸人を目指していたものの、挫折し、司法書士の道へと方向転換致しました。司法書士として頑張りつつも、たまに漫才イベントを企画しています。

専門分野・得意分野
家族信託、税務、財産活
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00552、登録番号:6918)
  • 簡裁代理(認定番号:1401068)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
司法書士法人クラフトライフ
所属事務所の所在地
東京都世田谷区用賀4丁目28番21号

活動実績・専門分野

財産の管理・承継に関するリスクマネジメントとその手続きを専門分野とする。司法書士の専門である法務だけでなく、税務、財産活用等多角的な視点による提案力が強み。大手保険代理店、医療法人、社会福祉協議会等、セミナーや勉強会実績多数。

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