相続時精算課税制度とは?税理士がわかりやすく簡単に解説!
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贈与税、相続税のことは、ちゃんと専門家に相談しよう!
節税を目的とした制度は複数あり、書籍やネットなどから必要な情報を簡単に収集できるでしょう。ただし、税金に関する計算は複雑になることが多く、制度についても専門家の間で解釈が分かれることがあります。贈与税や相続税については独断で判断せずに、専門家に相談することをおすすめします。
ここでは、相続における節税の考え方について簡単に触れてみたいと思います。
相続時精算課税制度の利用が節税になるとは限らない
控除額が大きい相続時精算課税制度には節税効果が期待できますが、必ずしもそうなるとは限りません。確かに贈与税は免除されます。しかし、贈与された財産は相続財産として加算されます。これにより遺産が基礎控除額を上回り相続税が発生したという場合は、節税効果を感じることは少ないでしょう。
税制特例は多種あり、相続税を含めた節税効果測定が必要
贈与税や相続税に関係した税制特例は、多種多様です。その特徴や仕組みから、ある程度の節税効果を予測できるかもしれませんが、ひとつの特例だけを見て「節税になる!」と飛びついたものの、結果的に予想以上の税金を払うことになったというケースも少なくありません。相続時精算課税制度は1度利用したら撤回することはできないうえ、併用できる制度も限られています。現実に即したシミュレーションをしたうえで節税効果を測定するのが理想でしょう。
税対策のみに偏ってしまうと危険
高額になりやすい相続税は、節税対策をする・しないだけで大きな差が出ます。しかし、節税ばかりに気を取られてしまうと、偏りが出てしまい、他のところにしわ寄せが来るかもしれません。
例えば、相続時精算課税制度を利用して、父親が節税目的で自社株を5,000万円で譲渡したとしましょう。時は流れて会社がうまくいき、自社株の評価も5億円に跳ね上がりました。父親が亡くなり、長男と次男、長女で遺産を分割するとなった時に、長男が持つ自社株が「特別受益(被相続人が存命の時に、ある相続人が特定の利益を受けていたとする概念)」とみなされた場合、「特別受益の持ち戻し(遺産分割の時に特別受益を加味して計算すること)」が可能となります。特別受益とみなされた場合の評価額は、相続を開始した時点での時価で計算され、遺産の取り分から5億円を引かれた長男は、他の財産を引き継ぐことができなくなりました。その結果、長男と兄妹の間で遺産分割の話がまとまらず、相続が長引くというケースは少なくありません。
このように、節税目的に制度を使ったとしても、長い目で見た場合にトラブルとなる可能性もあるのです。