相続時精算課税制度とは?税理士がわかりやすく簡単に解説!
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相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度は、贈与した財産に対して贈与時だけではなく相続時に税金を計算するという点に特徴のある制度です。通常贈与税がかかるのは、年間110万円を超えてからですが、相続時精算課税制度を利用した場合は、2,500万円までが非課税となります(2024年1月以降は、ここに年間110万円の基礎控除が加わります)。そして、贈与した人が亡くなった時に、贈与された分を加算し相続税を算出します。
簡単な例を挙げてみましょう。父が自分の財産から1,500万円を娘に贈与しました。贈与額が2,500万円以下ですので、贈与税はかかりません。その後父は、5,000万円の財産を遺して亡くなりました。相続税を計算する際は、5,000万円の遺産に生前受け取った1,500万円を加算します。
相続時精算課税制度の利用条件
制度を利用するには、以下の利用条件を満たす必要があります。
・贈与者:贈与した年の1月1日時点で、60歳以上の父母または祖父母
・受贈者:贈与を受けた年の1月1日時点で、18歳以上の子や孫(直系卑属)
・贈与があった翌年の2月1日から3月15日までに届出及び申告をする
相続時精算課税制度は、令和5年度税制改正大網によって一部変更されました。
現行制度との違いを比較してみます。
改正前
改正後
・年間110万円の基礎控除は加味されない
・たとえ少額でも贈与税の申告が必要
・2,500万円(特別控除)と年間110万円(基礎控除)の合計額を控除
・年間110万円以下なら贈与税の申告は不要
相続時精算課税制度のメリットとデメリット
小見出し1 相続時精算課税制度のメリット
①生前にまとまった財産を贈与できる
この制度のメリットは、まとまった財産を贈与しても、通常の贈与税がかからない点です。通常生前に財産を贈与する場合は、年間110万円までが非課税となります(暦年贈与)。相続時精算課税制度を利用すれば、非課税枠は2,500万円(改正後は実質2,610万円)まで拡大されます。
②相続税が0円の場合は贈与税も0円になる
相続時精算課税制度では、控除額以下の贈与であれば、贈与税は発生しません。さらに、贈与した財産を加えた遺産の総額が基礎控除よりも低くなれば、相続税は0円です。つまり、制度を利用すると、相続税と贈与税の両方を支払わなくて済む可能性があるということです。
③将来的に相続税を抑えることができる
例えば、贈与時は1,000万円の評価額だった株式が相続時に4,000万円になったとしても、相続税の計算では贈与時の時価(1,000万円)が用いられます。値上がりした分は考慮されないため、その分相続税を抑えられます。
小見出し2 相続時精算課税制度のデメリット
①制度利用の取消ができない
相続時精算課税制度を利用すると、撤回できません。つまり、贈与者が亡くなるまで制度を利用し続ける必要があります。
②単なる税金の先送りとなる場合がある
相続時精算課税制度を利用すると贈与された財産に対して控除額分は免除されますが、相続税は課されます。このように、相続時精算課税制度による贈与税の免除は単なる税金の先送りになるだけで、節税にはつながらないと考えられるのです。相続税は相続する財産が基礎控除額を上回った場合に発生しますが、贈与された財産を上乗せすることによって相続税が高額になると予測される場合は、制度を利用しない方がよいかもしれません。
③特例によっては併用ができない
相続税や贈与税を減額する制度は複数ありますが、中には相続時精算課税制度との併用ができないものもある点には注意しましょう。併用できない制度については後述しますが、他の制度の利用も視野に入れている場合は、併用の可否を確認するようにしましょう。
相続時精算課税制度の必要書類
相続時精算課税制度に必要な書類は、以下の5点です。
書類名
入手先
相続時精算課税選択届出書
各税務署またはこちらよりダウンロード可
贈与税の申告書
各税務署またはこちらよりダウンロード可
贈与者の戸籍謄本(または戸籍抄本)
贈与者の本籍地のある市町村役場
贈与者の戸籍謄本(または戸籍抄本)
上記に同じ
本人確認書類(個人番号カード等)
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相続時精算課税制度利用の手続きの流れ
同制度の主な手続きの流れは以下のとおりです。
①必要な書類を用意する
②手続きにかかる費用を用意する
③納税地を管轄している税務署に①を提出する