相続税計算のシミュレーション活用と注意点
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シミュレーションをそのまま利用するのは危険
相続計算シミュレーションを利用することによって負担する相続税の目安を把握できるうえ、複雑な計算の手間を省くことが期待できます。
ただし、場合によっては実際の税額と大幅にずれることがある点には留意しましょう。特に複数の財産を相続したり、引き継ぐ遺産額が高額になったりする場合は、シミュレーションで試算した数字をうのみにするのは危険です。
相続税対策や納税資金準備等事前準備の前提としては要注意
相続税の納税は、期限までに現金で納めることが原則です。高額の相続税を支払うことが予想される場合は、預貯金の他に株式などを換金し納税資金として確保する必要があるでしょう。
確保する納税資金の目安を把握するために、相続税計算シミュレーションを利用する人もいますが、それだけでは不十分と考えられます。
これまで見てきたとおり、相続税計算シミュレーションは、
・小規模宅地等の各種税制特例など特別な計算を必要とする試算には対応していない
・死亡退職金や死亡保険金などの非課税金額の試算には対応していない
・障害者控除や未成年控除など各種控除には対応していない
など、機能の面で制限されています。
例えば、「配偶者控除を利用した場合の二次相続にかかる相続税はいくらくらいになるのだろうか」「小規模宅地等の特例を使うことが節税につながるのだろうか」というふうに、個々の事情に合わせたシミュレーションをする際は、相続税計算シミュレーションでは試算が難しいでしょう。
相続税対策や納税資金準備を前提としている場合は、自分で試算をするか、節税対策の相談も含めて専門家に試算してもらうことをおすすめします。
相続税申告には使えない
相続税申告は、相続税を納める際に必要な手続きです。決められた用紙に必要事項を記入していきますが、その内容はかなり細かくかつ正確さが求められます。国税庁は相続税申告書の記載例を公開していますが、課税価格の計算から申告納税額まで事細かに記入する必要があることが分かります。
【国税庁が公開している相続税の申告書の記載例】
・出典:『相続税の申告書の記載例』
もし、申告書に記入漏れや計算ミスが認められた場合は、税務調査(税務署員による申告の正確性に対する調査)が実施される可能性があります。そうすると、税務署員に聞かれた質問には全て答える必要がありますし、ミスによって追徴課税が発生することも考えられます。特に、一般人が計算して作成したとなれば、正確性において疑問を持たれる可能性が高まります。こうした理由から、相続税申告には相続計算シミュレーションを避けるのが無難であると言えるのです。