相続税と生前贈与の税率の違いとは。わかりやすく簡単に解説!
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暦年贈与を利用する
暦年贈与は生前贈与で最もよく知られている制度で、控除額は年間110万円です。暦年贈与の控除額は他の制度に比べると少額なものの、毎年使い続けることで年々節税効果が高まっていきます。
例えば、所有している財産から毎年100万円を子に贈与し、それを10年間続けたとします。毎年贈与税はかかりませんので、合計1,000万円を非課税で子に渡すことができます。
また、贈与する期間は特に設けられていませんので、長期に渡って贈与を続けることも可能です。ただし、亡くなる前の7年以内に贈与した分は、相続税に加算される点には留意しましょう※。
※2024年1月1日より3年以内から7年以内に変更されました。厳密に言いますと、毎年の控除に加えて、延長した分の4年間には、総額100万円までの非課税枠が設定されています。
相続時精算課税制度を利用する
相続時精査課税制度とは、生前贈与した財産を相続時に加算して、相続税を計算する制度のことです。相続時精査課税制度の控除額は、2,500万円+年間110万円。贈与した財産の価額が控除額以下であれば、贈与税はゼロです(控除額を上回る場合は、差額分に贈与税がかかります)。相続時精査課税制度を利用した財産は相続財産に加算されますが、課税遺産総額が基礎控除額よりも低額であれば、相続税はかかりません。
教育資金を一括贈与する
生前贈与には、教育資金の贈与を目的とした非課税枠が設けられています。この制度が教育資金の一括贈与(正式には、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」)で、利用すると受贈者1人あたり1,500万円までが非課税となります。
教育資金の一括贈与を利用できるのは、
・受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)
・30歳未満の受贈者
・教育資金口座を開設できる受贈者
といった要件を満たした場合です。
教育資金の一括贈与のうち、教育資金として使い切れずに残ってしまった場合は、その残額に相続税がかかります。なお、教育資金一括贈与の適用期間は2026年3月31日までです。
配偶者居住権を利用する
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた自宅に配偶者が居住できる権利のことです。2020年4月1日より始まった同制度では、自宅の建物を「居住権」と「所有権」に分けて、配偶者はこの居住権を相続し、所有権は、子などが所有できるようになりました。
配偶者居住権には相続税がかかりますが、配偶者が亡くなるとともに消滅します。配偶者が亡くなった時点で非課税となるため、次の相続では相続税が発生しません。
例えば、父Aが所有する自宅(評価額5,000万円)に父Aと母B、子Cの3人が住んでいたとしましょう。父Aが亡くなり、母Bは居住権(2,000万円)を、子Cは所有権(3,000万円)をそれぞれ相続しました。数年後に母Bが亡くなり居住権も消滅したため、居住権における相続税は発生しません。また、所有権は父Aが亡くなった時に相続しているため、所有権にも相続税がかかることはありません。
配偶者居住権は建物に対する優遇制度ですが、宅地の評価額を控除する小規模宅地等の特例との併用が可能です。小規模宅地等の特例を利用するには要件を満たす必要がありますが、両制度を使うことによって大きな節税が期待できるでしょう。