相続とは?専門家がわかりやすく簡単に説明致します!
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相続税の申告が必要でも、相続税の支払いが必要とは限らない
相続税の申告は、原則として相続税が発生したときです。けれども、相続税の支払いが必要でない場合も申告が必要なときがあります。
相続税の申告が必要なときとは
①相続税課税財産総額が基礎控除額を上回るとき
「相続税課税財産総額」とは簡単に言うと、葬儀代などを差し引いたあとに残る、相続税の対象となる財産総額のことです。相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で算出される基礎控除額が設定されていて、相続税課税財産総額から基礎控除額を差し引いた課税財産額に、相続税がかかります。
例えば、課税対象となる遺産が5,000万円あり、それを配偶者と子1人で分割する場合の基礎控除額は4,200万円。5,000万円から基礎控除額を差し引いた差額の800万円に相続税がかかります。
5,000万円(課税価格)-4,200万円(基礎控除額)=800万円
②小規模宅地特例や配偶者控除を使用するとき
小規模宅地特例とは故人が所有している宅地に対して、相続時に最大80%の控除が受けられる制度です。例えば、故人が住んでいた自宅(評価額4,000万円、220㎡)を相続する場合、以下の算式で控除額を計算します。
・計算式:宅地の評価額×(限度面積×減額割合)※
※限度面積と減額割合についてはこちらを参照。
・控除額の計算:4,000万円×220㎡/220㎡×80%=3,200万円
・評価額の計算:4,000万円-3,200万円=800万円
配偶者控除とは、配偶者が受け取る財産に対して適用される控除のことです。控除額は、1億6,000万円または法定相続分のどちらか高い方を選択します。例えば、夫が2億円の財産を遺して亡くなり相続人が妻のみという場合の法定相続分は1(2億円)となり、引き継いだ2億円の財産に対する相続税はゼロ円です。
小規模宅地特例と配偶者控除の要件には、相続税の申告が必要です。
③相続時精算課税適用財産に納めた贈与税の還付を受けたいとき
相続時精算課税制度とは、贈与された財産の相続税を払う時に加算して計算する制度のことです。相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産には2,500万円(特別控除額9+110万円(基礎控除額)まで贈与税がかからず、相続時に相続財産に加算されます。
贈与された財産が控除額を超えた場合は、その課税価格に贈与税がかかります。相続時精算課税制度で贈与税を納めた場合、相続時にかかる相続税から納めた贈与税を差し引きます。の差額分です。この時に控除しきれない金額が生じた場合、還付を受けられます。例えば、Aさん父から生前に3,000万円の不動産を贈与されたとします。その場合、控除額を引いた390万円に贈与税がかかります。
(3,000万円-2,610万円)×20%=78万円
父が亡くなり相続税の納税額は50万円と計算されました。Aさんは税金を払いすぎたことになり、28万円という「控除しきれない金額」が生じます。この28万円が、Aさんが受け取れる還付金です。還付金の手続きをする際に相続税申告書が必要となるため、還付を受けるため申告をします。
相続税の支払いが必要になるときとは
上記のケースの中で相続税を申告して支払いが必要となるのは、①です。基礎控除を上回った分に相続税がかかりますので、申告と納税の両方を済ませます。たとえ相続税がゼロ円でも申告書を作成しなければならないのが、②です。③は、納めた贈与税が相続税を上回るため②と同じように「相続税は支払わないが、申告書は作成する」部類に入ります。
簡単まとめ
相続税の申告には、
・申告と納税の両方が必要
・納税の必要はないが申告は必要
の2パターンがあります。
相続税の申告においては、「税金が発生しない=申告しなくていい」ではない点に留意しましょう。