相続税計算における生命保険控除をわかりやすく簡単に解説!
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生命保険控除が節税対策になる4つの理由
生命保険控除が節税対策になる理由として、以下の4つが挙げられます。
・非課税枠を利用できる
・財産を渡したい人に渡せる
・遺留分や遺産分割に備えて資金確保ができる
・生前贈与を利用すると税金を抑えられる
非課税枠を利用できる
生命保険控除には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。財産の一部を生命保険の支払いに充てることで、非課税枠の分だけ相続税を抑えられます。
例えば、親が1億5,000万円の財産(現金)を遺して亡くなったとしましょう。
これをそのまま4人の子(相続人)で分けた場合の相続税額は、1,240万円です。
・課税遺産総額の計算:1億5,000万円-5,400万円=9,600万円
・各人の相続税額:2,400万円×15%-50万円=310万円
・相続税の合計:310万円×4人=1,240万円
今度は、1億5,000万円を現金8,000万円と生命保険7,000万円にして相続させる場合を考えてみます。
・生命保険控除の計算:7,000万円-2,000万円=5,000万円
・課税遺産総額の計算:(8,000万円+5,000万円)-5,400万円=7,600万円
・各人の相続税額:1,900万円×15%-50万円=235万円
・相続税の合計:235万円×4人=1,240万円
全て現金にするよりも、現金と生命保険にした方が相続税を抑えられます。
財産を渡したい人に渡せる
死亡保険金とは少々難しい言葉で表現しますと、「保険金受取人固有の財産」のことです。被相続人が死亡保険金の受取人を指定できるだけでなく、相続財産ではないことから、遺産分割協議で話し合って相続分を決める必要もありません。非課税枠以下の金額であれば、税金を支払うことなく受取人はまとまったお金を手にできるでしょう。
遺留分や遺産分割に備えて資金確保ができる
遺留分とは、法定相続人が最低限得ることのできる遺産の取り分のこと。法定相続分の半分が遺留分とされています。
例えば、亡くなった父の遺産を3人の子供たちで分割するとしましょう。法定相続分の1/2が遺留分ですので、相続人は各1/6ずつ遺留分を有していることになります。
亡くなった父の遺言書に「長男には1億円の不動産、2,000万円の現金を次男と三男でそれぞれ分ける」とあった場合、次男と三男の取り分は法定相続分よりも少なく、相続人の間で不平等が生じているのは明らかです。この場合次男と三男は、不足分(各1,000万円)を長男に請求できます。
・子の法定相続分:1億2,000万円
・子の遺留分:6,000万円
・子1人あたりの遺留分:2,000万円
・次男/三男の不足分:2,000万円-1,000万円=1,000万円
次男と三男から遺留分侵害額請求を受けた長男は、不動産の共有名義を避けたいと考えていますが、不動産以外に相続財産はありません。このように現物で分割するのが難しい財産を分ける一つの方法に、代償分割があります。代償分割は、現物分割に相当する金額を相続人に支払うことによって、遺産分割の不平等を解消します。分割する不動産の相当額を用意するには、まとまったお金が必要ですが、死亡保険金があればすぐに現金化でき代償分割に充てられるでしょう。
生前贈与を利用すると税金を抑えられる
全ての生命保険に有効というわけではありませんが、生前贈与による節税を前提として生命保険に加入することで、相続税を抑えられます。
生前贈与に向いている生命保険は、生存給付金を受け取るタイプです。保険契約者は被相続人(贈与者)で、受取人を受贈者にするとよいでしょう。このタイプの生命保険には、毎年生存給付金が支払われるものもあります。毎年の受取金額を控除額(年間110万円)以下にすることで、非課税で受け取り続けることが可能です。
加えて、贈与したお金を保険料の支払いに回すことで、相続税を抑えられます。例えば、被保険者が贈与者で受贈者が受取人という生命保険に加入し、贈与者は受贈者に対して110万円を贈与します。受贈者がそのお金を使って保険料の支払いをすれば、死亡保険金に対して所得税はかかるものの、相続税は回避できます。