相続放棄に必要な書類と用意の仕方
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熟慮期間を過ぎてしまった時の対処法
相続放棄の熟慮期間が過ぎてしまった場合は、原則として手続きは不可となります。熟慮期間が過ぎた後は、自動的に相続するものとみなされて、マイナス財産を含めた財産を相続することになるでしょう。ただし、相続を逃れる方法は残されています。
熟慮期間内に終わらないと予想される場合は延長を申請する
例えば、「故人が遺した財産の確認に手間がかかり、期限までに相続放棄することが難しい」と予想されるなどの「正当な理由」がある場合は、期間延長を認めてもらえる可能性があります。
「正当な理由」はケース・バイ・ケースで判断されるため「必ず延長を認めてもらえるケース」とは言い切れませんが、上記のように財産の確認ができず相続放棄すべきかどうかの判断が難しい場合は、認めてもらえる可能性が高まります。
その他にも
・連絡の取れない相続人がいる
・相続人の中に海外在住の人がいる
・先順位の相続人全員が相続放棄をしたことをずっと知らなかった
などのケースが挙げられます。
なお、熟慮期間の延長には以下の書類とお金を用意し、熟慮期間中に被相続人が最後に住んでいた地域を管轄している家庭裁判所に申立てをします。
その際に必要となる書類等は以下のとおりです。
・申立書
・申立て添付書類(戸籍謄本や住民除票など)
・収入印紙(800円)
・連絡用の郵便切手
詳細は、裁判所のホームページで確認できます。
熟慮期間経過後の延長申請を検討する
熟慮期間経過後の延長は、延長とともに熟慮期間中に申請できなかったことに相当する理由がない限り認めてもらえる可能性は低いでしょう。
認めてもらえる可能性のあるケースとして考えられるのは、被相続人に大きな借金が見つかった場合などです。遺産相続が終わった後に債権者から支払いの督促状が届いて初めて知る方も多いのですが、このような事情がある場合は、熟慮期間経過後であっても家庭裁判所に申立てをすることによって延長を認めてもらえる可能性は高いでしょう。
熟慮期間経過後の申請に必要なのは、上申書(事情説明書)です。上申書とは、熟慮経過後に延期の申請をする理由や事情を説明する書類のことで、正当な理由があって熟慮期間経過後に申立てをすることになった経緯を家庭裁判所に伝えるうえで重要な役割を担っています。
上申書には決まった形式はなく、自分で作成します。その際は、以下の点に注意し慎重に作成しましょう。
・記入内容は事実に基づくものであること
・住所と氏名、押印をすること
・熟慮期間経過後の申請になった経緯を説明すること
うまく説明できないなど作成が難しい場合は、専門家に相談または作成代行を依頼するとよいでしょう。
事実上の相続放棄を検討する
事実上の相続放棄とは、相続放棄の手続をせずに被相続人の財産の引き継ぎを放棄することです。事実上の相続放棄には、以下3つの方法があります。
①相続分を放棄または他の相続人に譲渡して遺産分割協議から外れる
②遺産分割協議で“相続分ゼロ”に合意する
③特別受益(被相続人から生前特別に贈与され利益を得ること)を受けたとして相続を放棄する
これらの方法には法的な効力はないものの、相続放棄に近い効果があります。ただし、事実上の相続放棄をしても、債権者から支払いの催促があった場合は無視できないなど、その効力は限定的です。
事実上の相続放棄を選択する場合は、専門家に相談しアドバイスを受けたうえで検討するのが賢明でしょう。