もっと早く知りたかった!家族信託を自分でやる際の注意点
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家族信託を自分でやる際の注意点
家族信託のスキーム構築段階の注意点
家族信託は、財産管理と遺産相続の両面をカバーする仕組みであるため、自分でやる際には、その両面について検討が必要となります。
考え方としては、優先順位順に、本人と妻(夫)の生活保障、円滑・円満な財産承継、財産の活用、相続税対策について検討します。
これらは相互に影響し、例えば、本人と妻(夫)の生活保障のことを考えれば、不動産を売却してしまえば生活原資が出来ますし、円滑・円満な財産承継という観点からも、不動産が完全に可分な金銭に転換することから、適切と言えます。一方で、財産活用の観点からは、立地の良い不動産を売却してしまうのは、長期的視点に立てば合理性を欠きます。不動産投資において、土地の仕入れ代金が掛からないというのは、強烈なアドバンテージとなるためです。また、相続税の観点からも、不動産が現金化されてしまうことはマイナスに働きます。これは、時価1億円の不動産が、相続税評価上も1億円と評価されるわけではなく、もっと安く評価され、かつ、貸付地としての評価減や小規模宅地等の特例の適用が出来る場合があるためです。
つまり、本人と妻(夫)の生活保障、円滑・円満な財産承継の観点からは問題ないものの、財産の活用、相続税対策の観点からは問題があるということです。
このように、相互に影響する施策について、総合的な観点からどのような財産管理、遺産相続の道筋を作るかがスキームの構築です。
そして、このスキームに応じて実行手続きを行うことから、信託契約書の内容に影響することとなるため、家族信託実行前に、全体スキームを構築する必要があるのですが、この工程を経ずに、場当たり的に家族信託契約を締結してしまうと、目的を達成できないなどの不都合が生じ、解除して再契約する等、対応に無駄なコストを払うことになりかねないため、注意が必要です。最悪なケースとしては、不都合が発覚しても、その時点で委託者(財産管理等を託す本人)の判断能力を欠いている状態に陥ってしまっていて、修正不可能となることも考えられますので、取り返しのつかないこととならぬよう、十分に注意してスキームを構築することが重要です。